更新をサボっていたので、この靴の修理日記は数日分の作業が一つの記事にまとまっています。ですが、「本底の取り付け」→「ヒールの取り付け」という流れは、作業している気分の区切りに意外とマッチしているように思います。
ということで、ヒールの取り付けに入ります。
前半部のコバ仕上げ
ヒールの取り付けに掛かる前に、前半部分のコバを仕上げておきます。
だし縫いの前に本底をウェルトのギリギリまで切り回して整えましたが、その後の作業で微妙に形状が狂いますので、この段階で再度、別たちを使って丁寧に仕上げました。
「形状は別たちで決めてしまい、その後のやすり掛けは表面の凹凸を整える」つもりで作業するようにします。

コバの表面は次の手順で段階的に仕上げます。
- 木やすり
- ガラス片
- 紙やすり♯120(ドライ→ウェット)
- 紙やすり♯240(ドライ→ウェット)
それぞれのステップで妥協せずに磨き切るのと、凸凹を取るために、やすりを大きなストロークで掛けることを心掛けています。
最後にコバを水で濡らしてから、上端のエッジを出しつつ革を押し固めるイメージでずぼらゴテを当てて完了です。

積み上げの準備
積み上げに入る前に、ヒールゲージを作りヒールの中心線を決めるようにしています。
かかとにはウェルトとだし縫いが来ていませんので(シングルウェルト)、本底のかかとは16ミリのスクリュー釘で中底に打ち付けて固定します。
釘を打つ時には必ず台金を使い、打ち込んで内側に突き出した釘の先端が当たって曲がるようにします。履いた時に釘が足に刺さるのを避けるのはもちろん、釘の先が曲がることで抜け止めになるからです。

土踏まずをモッコリふっくらとさせたため、本底のかかとには強い丸みが現れています。そのままでは積み上げ革を貼るのも難しいですので、「ハチマキ」と呼ばれるクサビ形の革を使って、丸みを緩和しました。
何とかして積み上げ革を貼って削ることもできますが、ここは少し楽をするようにしています・・・

革の積み上げ
1枚目の積み上げは、とにかく平面を出すことを目指します。
ヒールを平らな面に押し付けた時にガタガタしなくなるまで、「あーでもないこーでもない」と、別たちで削りました。
積み上げでは、この工程に一番時間を掛けるようにしています。


2枚目ではヒールの角度を合わせます。
ここでも、まず平面を出してから、トップリフトの上に置いた時に「ベタっ」と設置するように、ヒールの前後方向の傾斜を調整します。


ここでヒールを釘で本体に固定します。「トップリフトは交換するもの」ということだと考えています。
釘は19ミリのスクリュー釘で、本底には間違いなく届いている長さです。たくさん打ち込むのは、ヒールのコバ面に向けて革の密度を上げる効果を期待しているからです。

コバ面を別たちで整えます。
左右差や靴全体とのバランスを何度も確認しながら、ヒールゲージも使って少しずつ削り込みました。ヒールの形状はここで決めますので、楽しくも時間のかかる作業です。

コバの磨き
せっかくキレイに削り上げましたが、次に水で濡らしてからハンマーで叩き締めます。
革靴で歩いた時に似た「コツコツ」という音を聞きながら、少しでも革が締まるように叩きまくります。

ここからは地味な作業ですので、駆け足で(笑)
まずは、木ヤスリとガラス。


♯120と♯240の紙やすり。
いずれも、一つ前の作業で付いた傷が完全に消えるまでを目安に、しつこく掛けます。


コバの磨きができたら、アゴを整えて作業完了です。
機能的な意味はなく、履いている時に見えることもありませんが、この立体的な土踏まずがヒールに突き刺さっている(!)感じを出したいために、積み上げの作業に時間を掛けています。

ずっと地味な作業が続きますが、一つ一つを丁寧にやり切ることで仕上がりの質が上がるような気がしています。
ここからは作業ごとに靴がキレイになっていく、分かりやすい工程に入ります。
最後まで読んで下さいまして、ありがとうございました。

コメント