ジャランスリワヤのストレートチップに本底を取り付ける作業の様子です。
通常のウェルテッド製法と違い、ウェスト部分だけマッケイ縫いになっているのが特徴ですね。これが、なかなか面倒なのですが、色々と工夫しながら手縫いで仕上げていきます。
この造りを活かしてベベルドウェストにしてみました。
盛りだくさんの作業記録をどうぞ!
本底の下加工
まずは、ダイソーの荷造りテープを使って、靴底の形を写し取ります。
今回はウェスト部分のマッケイ縫いの穴を写したいので、コルクを入れる前に作業しました。

靴に貼り付ける面の「にべ」と呼ばれる層を削り落とします。
ご覧のようにかさぶたが取れるように削れて気持ちのよい作業です。

だし縫いを隠すために革を薄く切り起こします。ドブ起こしという作業です。
ウェスト部分は、マッケイ縫いの位置に合わせて幅を広く(深く)起こします。

ウェスト部分のマッケイ縫いは、あらかじめ縫い穴を開けておきます。
型紙を革の上に置いて、千枚通しでブスッとやります。

千枚通しの穴を、だし縫い用の針で拡げました。

接着する部分を木ヤスリで荒らせば、本底の下加工は終了!
自分なりに先を読んで、色々と仕込むのが楽しい工程でした。

中もの
コルクを貼り付けて削ることで、本底を貼り付ける面の凸凹を無くしつつ、土踏まずは少しモッコリさせたりします。
- コルクを入れる部位に荷造りテープを貼り付け、形を写し取ってから剥がす
- 剥がした荷造りテープにコルク板のハギレをパズルのように貼り付ける
- 荷造りテープと一緒にコルクを切り出して、靴に接着する

せっかくウェスト部分がマッケイ縫いですので、ベベルドウェストに仕立てることにしました。
ウェルトの幅を切り詰める訳ですが、だし縫いが不要ですので「すくい縫い」のギリギリまで攻めることができます。
いつものことですが、少し後ろめたい作業です・・・

本底の貼り付けとだし縫いの準備
念入りに仕込んだ本底を貼り付けます。
ハンマーで圧着しますので、その時に付いた凸凹をこくり棒で擦って滑らかに整えておきます。

だし縫いに向けて、コバを切り回します。
全体的にコバの張り出しが多いと感じたので、詰め気味に削ってみました。
この作業をすると、完成形のイメージが少し見えてきますね。

だし縫いの溝を掘る前に、トゥスチールを取り付ける部分を削り込んでおきます。
いつも靴底よりもスチールが少しだけ出っ張るので、深めに削ってみました。

ドブ起こし済みの「ピラピラ」は水で濡らしてからめくり上げます。
通常なら、ここでだし縫いの溝を掘りますが、今回は課題のマッケイ縫い用の穴を確認しました。
型紙を頼りに開けた本底の穴が、元々開いている中底の穴と繋がるか?・・・
何とか無事に靴の内側まで貫通していました!

やっと溝掘りです。
通常のだし縫いとマッケイ縫いを切り替えますので、溝は繋がらず、こんな感じになります。

だし縫い
まずは、ウェスト部のマッケイ縫いから。
いつもより短い糸を準備して、縫い針はナイロンテグスにしました。
(実はこの前に金針にしたら、うまく通せなかったからです)
靴底側から見ると、普通のだし縫いにも見えますが・・・・

反対側の縫い目は靴の内側に来ます。
見えづらく手が入らないので、思いのほか時間が掛かりました。

前半分は恒例の大好物、普通のだし縫いです!ステッチが粗いので、一気に縫い上げました。
ピッチの広いだし縫いは、ややカジュアルな雰囲気になりますが、強度的にはウェルトに優しいと言えます。
コバの幅が広めなのも、オールソール交換を繰り返し行える仕様です。
修理を前提とした造りであることは、「良い革靴」の条件だと私は思います。

起こした革を接着し直して、靴底のステッチを隠せば、だし縫いは完了です。
一連の作業でコバ面が凸凹になりますので、それを整えつつ、最終的なコバの幅まで削り込みます。

ベベルドウェスト加工
マッケイ縫いを掛けたウェスト部分は、本底を巻き上げたベベルドウェスト仕上げに。
本底を斜めに薄く削ることで、巻き上げるためのピラピラを形成します。
最近は「別たち」だけで削りこめるようになりました。

あとはピラピラを水で濡らして、ウェルトとアッパーの間に「巻き上げる」というか「押し込む」というか・・・こんな感じです。
これで修理前半のヤマ場は終了です。
後半は毎度の難関「ヒールの取り付け」から始まり、磨き→染色→熱ゴテ・・・という楽しい作業に続きます。
最後まで読んで頂きまして、ありがとうございました。

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