自分で靴修理 宮城興業の革靴をDIYオールソール交換 なんちゃってベベルドウェスト編

絞ったウエスト
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「ウェルトを温存しつつ、ベベルドウェストっぽい見た目にできないか?」という、思い付き企画のメイン記事です。思いつくに至った理由は、前の記事をご覧ください。

要するに、右側の図のように「ヒドゥンチャンネルのピラピラ・・・・でコバを包んでしまおう」という構造になります。では、参りましょう!

例によって縮尺がオカシイです

本底の加工

まずは、ウェルトからはみ出た本底を削ってコバを成形していきます。

ウェストはこんな状態
ピラピラは起こして、裏側へ折りたたんであります

だし縫いとウェルトの間の角を落とすように、別たちで少しずつ削ります。

本底の角を落とす
夢中になり過ぎてアッパーを切らないように

おおまかな形ができたら、あとはガラスで仕上げます。
ガラスは「当たり・はずれ」も含めて、キレが悪いと感じたら惜しみなく新しいものに交換するのが大事ですね。

ガラスで削る
ギリギリまで・・・

コバの下側を斜めに削り落とした状態に仕上がります。
前後とは面を滑らかにつなげておきました

削り込んだウェスト
だし縫いの方は、もう少し攻められますね

ドブ伏せ

いよいよ、ピラピラを貼り付けます!
接着力を最大限に引き出したいので、接着剤を塗る面は#80のペーパーでゴリゴリと荒らしておきます。
だし縫いが掛かっている部分には溝を掘る時のバリや変形がありますので、ここも平らになるようにペーパーで整えます。それで糸が切れるようなら、溝が浅すぎるということになりますね。

接着面の荒らし
奥の方もしっかりと

この間の写真と作業記録が抜けています。
「ピラピラが短すぎて、コバを包めない」ことが判明したからです(汗)

色々と考えましたが、
ピラピラを長くして(=ドブ起こしの幅を増やして)ピラピラを引っ張って伸ばす
という、捨て身の作戦に打って出ることにしました。では、続きをどうぞ!

ピラピラを伸ばすのは水で十分だと思いましたが、「気持ちだけでも」と、ストレッチスプレーを使ってみました。伸ばしては乾かし、を何度か繰り返しました。

ピラピラが足りない
少しでも伸びやすくなるように、とピラピラのギン面は落としてあります TT
匂いからすると、水とアルコールが主成分っぽいです
靴の中にスプレーして履いて伸ばす製品ですので、速乾性を持たせようとしてるんですかね~?

粘っているうちに、何とかなりそうな雰囲気になってきました!!

これが限界
意地の勝利?

接着面を再度荒らして接着剤を塗り、ピラピラを水で湿らせて柔らかくしてから、シワを伸ばすように貼り付けて行きます。
一通り貼り終わったら、ハンマーで叩いて圧着しつつ凸凹や細かなシワを取っておきます。

ドブ伏せ
ハンマーの打面は革に傷を付けないように磨いてあります

ピラピラはハンマーでは貼り付けられないので、手でグーっと伸ばしながら貼り付けました。

余っている革を別たちで切り落とすと・・・・これが「なんちゃってベベルドウェスト」です!
色を染めると印象が変わると思いますが、これはこれで「ウェストに何か加工がしてあって、華奢に見える」という面白い形になりました。

かかとの釘

いつもはサラッと流す工程ですが、完全にいつもと違うことをやってみるモードに入ってます。

本底を止める釘の位置は、これまで「コバから10ミリ」にしていました。
図はかなり極端ですが、釘(赤い方)を内側にし過ぎるとヒールの取付が不安定になると考えているからです。
ところが、10ミリの位置に釘を打つと、アッパーの丸みに乗り上げて本底が上側に曲がってしまう(左側の図)ことがあったのです。釘を内側に向けて打つことで、何とかしてきたのですが・・・

赤い釘の先は、台金に当たって曲がることで「返し」になっています

ということで、今回は「コバから15ミリ」に変更してみました。オリジナルの位置とほぼ同じです。

この後、ヒールを取り付けてみないと・・・という話はあるものの、この時点でしっくり感が格段に良くなっているのが分かりました。いつもやってる作業を何の気なしにいつも通りやる怖さを痛感…

本底固定の釘
しっくり

コバの仕上げ

だし縫いの溝を掘る時にコバを整えましたが、その後の作業で凸凹になっていますので、ここで最終的な形状に削り直します。

切り回し
もっとウェルトのギリギリまで削るべきですね

別たちの作業精度をできるだけ上げておくと、この後の作業が楽になります。

切り回し完了
コバは平らで地面に対して垂直になるように心掛けてます

次に、コバを磨いて仕上げます。いつもは、

木ヤスリ→ガラス→#120ペーパー→#240ペーパー

の流れですが、今回はガラスまでで止めました。

イケメン先生のこの動画に触発されたからです。

なんとキレイなコバ

木ヤスリ→ガラス→空ゴテ→#240(たぶん)ペーパー→空ゴテ

という手順ですので、次はコテを掛けます。
ずぼらゴテの爪の先端が立ち過ぎているような気がしていましたので、斜めに削り直してみました。

コテを掛けると革の目が潰れて光沢が出ますね。ガラスの跡が残るのも、お手本動画の通りです(笑)

空ゴテ
どことなくピシッとしないですね~

ガラスの跡を消すつもりで、コバの中央を狙って#240ペーパーを掛けます。写真を撮り忘れましたが、空ゴテを掛け直すと、艶のあるコバに仕上がりました。

ですが、私の技術+使っている道具(仕立てを含めて)では、これまでの手順が良いと感じました。
私なりに考えた今回の方法の良い点と使いにくい点をまとめてみます。

良い点・#120ペーパーを掛けないので、削り過ぎてコバの形状が狂う可能性が低い
・空ゴテを2回掛けるので、コバの目が詰まる(ような気がする)
使いにくい点・苦手な(コテの仕立てが良くないのもあります)空ゴテを、2回掛けないといけない
・#120ペーパーでの修正代がないので、ガラスやコテの作業精度が必要

今回はダブルソールでしたので、その影響でやりにくいと感じたのかも知れません。
機会を見て、再度トライしてみようと思います。

#240ペーパー
少しでもコバの丸みを取るように、中央を狙います

トゥースチールの取付け

いつもはスチールを取り付けてから、本底のコバと一緒に金ヤスリを掛けていました。そうすることで、本底とスチールのコバ面が段差なく仕上がると思っていたからです。

ところが、革と鉄を同時に削ると、どうしても革の部分が削れやすいため、コバの角度が末広がりになったりコバ面が凸凹したり、という状態になりがちでした・・・

はい、そうですね。
これも「コバを仕上げてから、スチールを取り付ける」という、いつもと違う順序を試してみました。

トゥースチールが収まる部分は、あらかじめ掘り込んでありますが、なかなか曲面をピッタリと合わせられません。ですので、取り付ける直前に現物合わせでスチールの形の調整が必要です。
私はゴム板(古いトップリフト)の上で叩いて合わせるようにしています。

トゥースチールを接着剤で仮止めしてからビスで固定し、コバから出た部分を根気よく削り落とします。マスキングテープが削れるかどうかを見ながら指で段差を確認して、ピッタリになるまで作業します。

ひたすら削る
このあたりで「勝ち」を確信しています

まずまずの収まり具合です。

ちなみに、約1cmだけ本底のギン面が掻いてあるのは、スチールが付くと作業しにくくなるからです。

トゥースチールの収まり
自分史上最高の出来栄えです

勿体つけましたが、できあがりの写真です。
コバの角度と平面度、スチールとの段差、いずれもこれまでより良く仕上がりました。


今回は意識して、色々な作業で「いつもと違うやり方を試す」ようにしてみました。
これ、メッチャ大事ですね!
当たり前のことですが、自分のやり方が正解な訳ありませんし、道具や技術が少しずつ良くなっているとすれば、その時点での正解は変わり続けている、かも知れないですので。

スミマセン、少し興奮してしまいました。
問題の「なんちゃってベベルドウェスト」が破綻せずに済んだので、ヤマ場は超えた感じがします。
この後は、地味な積み上げと派手な仕上げの作業へと進んでいくことになります。

今回も最後まで読んで下さいまして、ありがとうございます!

スチールの仕上がり

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