今回の教材は、スコッチグレインの内羽根セミブローグ。
素っ気なさがたまらないストレートチップに対して、崩し過ぎない中で少し洒落っ気を感じさせるのがセミブローグの魅力ですね。
素敵な一足なのですが、例によって中底がどす黒く変色してしまっています。
今回の記事は、そんな中底を半ば強引に新品へと交換する様子をご紹介しながら、中底が劣化する理由とその予防法にもチョットだけ触れてみます。
ヒールの取り外し
まずはトップリフトを剥がします。私は形に憧れて釘抜きを買いましたが、ニッパーやペンチでも作業できますね。
剥がすと出てくる釘のようなものも、引っこ抜いておきました。

積み上げも外します。大きめのマイナスドライバーを突っ込んで「ひねる」ことで、ペリペリっと剥がしましょう。
ちなみに、スコッチグレインの積み上げは、ナンポウと呼ばれる集成材ですので再利用はできません。

古い中底の取り外し
中底とリブテープは接着剤で強力に貼り付けてあります。すくい縫いの糸が掛かる、重要な部位だからですね。

中底をリブテープから剥がす時には、有機溶剤で接着剤を溶かしながら作業すると楽です。
ところが、スコッチグレインの中ものはEVAスポンジを両面テープで貼り付けてあるため、接着剤がドロドロに溶けて手が汚れてしまうのです。
そこで今回は、剥がしにくい爪先の本底を剥がしてしまい、その隙間からドライバーを突っ込んで、中底を剥がす、という方法にしてみました。
爪先は芯が入っていますので、アッパーの形が大きく狂うこともなさそうです。

新しい中底の取り付け
取り外した中底の形を写し取って、新しい中底を切り出します。
リブテープと接着する部位は、ヤスリで毛羽立つまで荒らしておきました。

革靴の中底はタンニン鞣し革で、phは3-5.8を外れると、急速に劣化するデータが出ている。
— ZinRyu1 (@Zin_Ryu) May 30, 2021
とはいえ、ph3以下にするのは余程の酸性を塗布しなければならない。また、何もしなければ足の汗に細菌が作用してアルカリ化方向に傾くので、酸性の液体で中和するのは大切と言う結論に落ち着いてる。 pic.twitter.com/BPnAB3BBGV
接着する両側にゴムのりを塗って、ベタ付かなくなるまで乾かします。

いつもの「すべり台作戦」で中底を入れたら、台金とハンマーを使って圧着します。
接着する箇所は見えませんので、だし縫いを目印にして、その少し内側をよく叩いておきました。

新しい中底が付いたら、いよいよ本底を剥がして「ご開帳」です。
キレイに剥がれました!
見えるようになりましたので、この段階でもう一度リブテープを叩いて圧着しておきます。

かかとのアッパーを止めている釘は、中底まで貫通して止まるものです。
そこで、ハチマキを外して釘を直接打ち込むことで、新しい中底にキチンと固定しました。この作業により、かかと周りがしっかりした感じになります。

本底を貼り付ける下準備
だし縫いの糸とウェルトに残った接着剤をキレイに取り除けば、分解の工程は終わりです。

ここまでの作業で、本底が外れて中底がリフレッシュしました。以前は中敷きを入れてごまかすことが多かったのですが、やはり新品の清潔感は間違いありませんね!
この後は、組み立てていく側の作業に移ります。どんなデザインにしようか、いまからワクワクしています。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。

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