スコッチグレインのオールソール交換もいよいよ終盤です。
破れてしまった「かかと」は、頭を悩ませながら補修しました。
その後は、ヒールに飾りの釘を打ち、染料で色を入れたり、ロウを浸透させて艶出しするなど、お化粧をしていく楽しい工程が続きます。
最終仕上げの靴磨きまで、見る見る仕上がっていく様子をお楽しみください。
破れたかかとの修理
スコッチグレインの靴は「かかと」のライニングが擦り切れていて、上端のステッチまで切れているのを良く見かけます。
靴ひもをキチンと締めずに、パカパカと履かれることが多いのでしょう。
この靴はさらにその上を行って、片方の「かかと」が裂けていました・・・
さて、どうやって直しましょうか?

下準備
状況を整理するのも兼ねて、傷口まわりの糸を解してみました。

まずは、これ以上裂けていかないように、伸び止め用のナイロンテープで補強しておきました。
テープの接着力だけでは心もとないので、この後で他の部材と一緒に縫い付けます。

アッパーの外側も一部が崩壊していました・・・・
どうしようか悩みましたが、欠損部を複製して接着+縫い付けをしておきました。
複製のつもり じっくり見ないで
次は、内側の補修に戻ります。
かかとのライニングも擦り切れて無くなっていますので、ハギレを切り出してパッチにしました。
周囲を薄く漉いて段差が出ないようにしてあります。

パッチはゴムのりで接着しました。
微妙に残ってしまった段差は、アドベースで埋めておきました。

すべり革の補修
下準備ができましたので、ここからは「いつものかかと補修」です。
補修用の革は、このあと貼り付けた時に段差が出ないよう、両端をペラペラに漉いておきます。
別たちをキンキンに研いでおかないとできない作業です。

両面テープで本体に仮止めしてから、チクチクと縫い付けます。
この時、先ほどのナイロンテープと革パッチも一緒に縫うことで一体化させます。

縫い付けた革を織り込んで貼り付ければ完成です!
何とかこれで履けるようになりました。

靴底まわりの染色と仕上げ
いよいよ楽しい作業のスタートです。
下準備
靴底は染料が入るように、ギン面を削り落としておきます。
ガラス→紙やすり(#120、#240)の順で作業し、できるだけ滑らかにしました。
このタイミングでヒールには化粧釘を取り付けます。

土踏まずは色を塗り分けますので、マスキングを作成します。
今回は現物に荷造りテープを貼り付けて形を写し取ってみました。
荷造りテープをマスキングテープに貼り付けて一緒に切り出せば、マスキングは完成です。

マスクを貼り付けた状態です。
現物から直接写し取っていますので、ピッタリと合って気持ち良いですね。

染色
はじめに、コバと土踏まずを早染めインキで黒く染めました。
一度染めたら、染めムラと表面を整えるために、#240の紙やすりを優しく掛けておきます。

その後で、2度目の染めをしました。

反対側のマスキングに貼り替えて、前半部をソールステインで仕上げます。
完全には乾かさず「少し液滴が残っているかな」という状態のうちに、柔らかい布で拭き・磨き上げるのがコツです。

熱ゴテ
エッジ部だけに熱ゴテでロウを入れる「額縁仕上げ」です。
自分で削ったコテを使っていますが、やはり専用のコテが欲しい今日このごろ・・・

コバ面はよくロウを吸い込みますので、少し多めにロウを塗り付けてから溶かし込んでいきます。

ということで、表面に残ったロウを拭き取って磨くと、こんな感じ。
しっとりとして長持ちする黒光りが現れます。ここまでの全ての作業の良し悪しが出る瞬間です。

残りの作業
ヒールの上部には、自作の道具を使ってギザギザ模様を入れます。
コレが無いと、どことなく間延びした印象になります。

かかとの中敷きを貼り付ければ、修理は完了です。
中敷きの前端は両面テープで、それ以外は接着剤を使っています。
前端まで接着剤で貼ろうとすると、はみ出した分の処理が面倒だからです。

総仕上げの靴磨き
トゥキャップは銀浮きしていましたので、濡れたティッシュで一晩パックしておきました。

靴磨きはいつもの3ステップです。
乳化性クリームは表面に残らないようにするのが大事ですので、豚毛ブラシでよ~く擦り込んでから、柔らかい布で磨いて仕上げます。

新品の靴ひもを通せば、長かった修理は完了です。

今回も「やりたい放題」の修理を存分に楽しみました。
ですが、例によって色々な気付きや反省点があります。
ストイックになり過ぎると「楽しむ」という本来の目的を見失いますが、単純な不注意をなくすような作業の工夫を考えたいなぁと思っています。
最後までお付き合い下さいまして、ありがとうございました。

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