恒例の「地味回(笑)」積み上げの工程です。今回は自分の靴を修理しますので、仕上げ方と履き心地の関係を検証するという、珍しくアカデミックな内容が盛り込まれています。同じような履き心地の悩みをお持ちの方の参考になりましたら幸いです。
積み上げ作業のテーマは「土踏まずの痛みの解消」です
この靴は「オブリークラスト」と「トーマスヒール」が特徴で、矯正靴をルーツに持つと言われる、かの「オールデンのモディファイドラスト」に近いコンセプトだと思われます。
プロフィットイイジマHPより引用
「トーマスヒール」は、土踏まずを支えることで偏平足などのサポートに用いられるものです。確かに内側のアーチを持ち上げられるような履き心地は気持ち良いのですが、私の場合は長時間履くと左足の土踏まずが痛くなることがありました。
この原因を次の写真のように「トーマスヒールの前端による突き上げ(矢印)が強すぎるのでは?」と推定しました。

そこで、ヒールの傾斜を積み上げで調整・吸収することで痛みを解消できないか、検証してみることにした訳です。
積み上げ作業の様子です
靴修理の場合は「元々ついていた」ヒールがありますので、コレを利用してヒールゲージを作ります。この時、靴本体にもヒールの中心線をマークしておきます。

ヒールゲージを使って引いた補助線を目安に、16ミリのスクリュー釘を使って本底のかかと部分を中底に固定します。

アゴのラインはぴったり、それ以外は3ミリくらいの余裕を持たせて、積み上げ用の革を切り出してから貼り付けます。

一枚目の積み上げは本底の丸みを吸収する、つまり平面を出すことに集中します。
土踏まずのモッコリは仕込んでいないのですが、なかなか平面が出なくて苦労しました。トーマスヒールのためでしょうか・・・

2枚目は今回のテーマの傾斜調整です。
アゴが靴の前方にあるので、いつもより多く削る必要がありました。トップリフトを付ける前はこんな状態です。

積み上げの上からトップリフトを貼ります
トップリフトは気に入っていたVibram5344の予定でしたが、いつもの気まぐれ(笑)でダブテイルタイプにすることにしました。

積み上げ革と同じ要領で切り出してみました。ゴムがあるだけで難易度が上がります。

このゴム付きトップリフトの貼り付け面はツルツルでしたので、木ヤスリを使ってザラザラに荒らしておきます。

トップリフトは接着力だけで固定しますので、ゴムのりを熱活性させてから貼り付けます。

ゴムが切りにくいので、外周の荒仕上にはカッターを使いました。
カッターでは微妙な角度が出せません(私の腕前では)ので、最終的に形を決めるのには別たちを使います。

積み上げが終わり、ヒールが付きました
ヒールの外周を別たちで切り回した状態です。
何とかトップリフトがべったりと接地する角度に調整することができ、試したかった状態になりました。
完成までには、もう少し掛かりますが、履き心地の変化が今から楽しみです。

思い付きで採用したダブテイルとトーマスヒールの組み合わせは、内側が間延びした印象を受けますね。化粧釘の配置でバランスが取れないか、と甘いことを考え始めています。
最後まで読んで下さいまして、ありがとうございました。

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