靴修理はいよいよ終盤戦に入ります。各部の下地を整えて染色してから、熱ゴテでロウを浸透させることなどによって、深いつやを表現し見栄えを高める「楽しい工程」が続きます。実際に作業した順番に書いてありますので、その臨場感と手間の多さをお楽しみ頂ければ、と思います。
トゥスチールの取り付け
コバを仕上げる前にトゥスチールを取り付けます。一緒に削ることで、ツライチにできないか?と考えたからです。
まずは、ゴムのりで固定です。最近、刷毛をトルエンに漬けて保管するようになって、毛先が柔らかいので塗りやすく、ご機嫌です。

貼り付けたら、下穴を開けてからビス止めします。

コバからはみ出したトゥスチールを削ってみました。甘めに仕上げたコバも一緒に削りましたが、なかなかパキッとツライチにはならないものです。悩みは続きます・・・

コバの仕上げ
ハイ、いつもの手順です(笑)
ナンポウの積み上げは削りやすいのですが、逆に言えば傷も付きやすいので、意外に難しかったりします。
湿らせてからの#240ペーパーが済んだら、水で濡らして「ずぼらゴテ」を掛け、ウェルトの角をピシッと出しておきます。




ヒールのコバが削り(磨き)終わったら、前端を整えます。ここが真っ直ぐになると、シャキッとした雰囲気になります。

化粧釘
このあたりから楽しい「飾り付け」の工程に移ります。
革とゴムを組み合わせたトップリフトには化粧釘が欲しくなります(私だけ?)ので、下準備としてギン面を削り落としておきます。

今回の靴修理はセクシー路線ということもあり、化粧釘のレイアウトも少し凝ってみました。
釘の位置を決めたら、下穴を開けてから真鍮釘を3ミリほど残して打ち込みます。

飛び出した真鍮釘をニッパーで切ってヤスリで削り込むと、こんな感じになります。いいデザインですね。

靴底の染色
靴底用の染料を入れるために、まずは本底のギン面をガラスで削り落とします。
フィドルバックの部分は、ギンを掻くだけでなく稜線がハッキリ出るように、削り整えます。

ガラス片で削った跡を消しつつ、均一な質感になるようにペーパーを掛けます。


フィドルバックの部分をツヤツヤに仕上げたいけど、どうすればよいかな?

とりあえず、コバと同じようにやってみれば?
うさぎ先生とのやりとりはともかく、水で湿らせてペーパーを掛ける作業を追加してみました。

さらに、空ゴテ(熱していないコテで革の表面を押し固める)を掛けました。

準備ができましたので、インキを入れない部分を染料で仕上げます。ヒールの化粧釘がハッキリ見えてイイ感じです。

インキでの染色
だし縫いの糸、コバ、フィドルバックは黒くしますので、順番に塗りつぶしていきます。専用のインキは速乾性で使いやすいです。

全体を塗り終えたら、表面の質感を整えつつ深く染色するために、#240のペーパーで均しておきます。

染め終わりました。

熱ゴテ
熱したコテでロウを浸透させてコバ周りを仕上げる工程です。今回は始めに、自作の小口ゴテで額縁仕上げをしました。

「今回は始めに」と書いたのには理由があります。
小口ゴテを当てると、コバ面にもロウが回り込みます。これまではコバの熱ゴテを先にやっていましたので、回り込んだロウは布で拭き取っていました。
手順を逆にすれば、布で拭き取らなくても良くなるのでは?という風に考えたのです。

インキで染めた部分に熱ゴテでロウを浸透させ、エッジや表面を整えます。
部位や材料によってロウの染み込み量が違いますので、塗り付けておくロウの量を加減しておくと、この次の拭き取り作業が効率よく行えます。



浸透せずに残ったロウを拭き取りつつ磨き上げます。色々なアラに気付くものの、この瞬間に現れる黒光りの質感を毎回楽しみにしています。

仕上げの色々
ヒール側面の上の方にギザギザ模様を付けます。私は100円ライターを改造した道具を使っています。

ヒールソックが傷んでいましたので、革を切り出して作り直してみました。前端部を薄く漉いてからナイロンテープで補強してあります。

作業中に付いた手垢などをクリーナーでキレイに落としてから、栄養補給の靴磨きをします。もともと靴のお手入れ好きから始まってますので、楽しいひとときですね。

できあがりです!!
長かったですが、これで完成です。フィドルバックに初挑戦の今回でしたが、何とか形にすることができました。ご覧の通り、なかなかのトンガリです。
パッと見るとフツーの黒い革靴の裏に、このような凝った細工が入っているのは、江戸の粋に通ずる格好良さが感じられますね。
今回も行ったり来たりして反省点も多いですが、存分に楽しむことができました。あまり間を空けずに同じ仕上げを練習したいと思っています。
最後までお付き合い頂きまして、ありがとうございました。




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