ジョンロブのWIDNERというブラインドブローグを修理する機会に恵まれました。
かなりの傷み具合で、オーバーホール的な作業になりそうです。
今回は、いつも楽しい分解工程です。はたして初めて見る超高級靴の中身は?!意外な発見もあった分解編をお楽しみください。
今回の教材はコチラ
続けていると、こんな靴にもめぐり合えるのですね。
「JOHN LOBB PARIS」というロゴを見ただけでも、
と、妄想が頭の中を駆けめぐります。

「WIDNER」という、いまは作られていないモデルです。
かなり傷みが激しいですが、コツコツと直していきましょう!

ヒールを分解します
トップリフトはミスターミニットのものが付いていました。

ヒールの積み上げはオリジナルのままでした。
本革ですので残しておいて再利用します。

本底を剥がします
私が見た中では最もピッチの細かい「だし縫い」の糸を切って、本底を剥がしました。

かかとに残った本底は再利用しようかと思いましたが、中を見てみたいので取り外しました。
その後で、コルクとシャンクも外して掃除しておきます。

ウェルトも外します
ウェルトは一部がちぎれましたので、すべて交換することにしました。
ウェルトと靴本体を縫い付けている「すくい糸」は、ミシンで縫ってありますので切らなくても「ほどく」ことができます。

ウェルト側(外側)の糸がほどけたら、内側の糸を引っ張ると外れます。
独特の音と感触がチョット気持ちよい作業です。

ウェルトが全て外れました。
中底とアッパーは、ホッチキスのような金具で止めてありますので、バラバラになることはありません。

外したウェルトを観察してみます。
コバの張り出しを抑えたエレガントな造りのためか、「だし縫い」が「すくい縫い」に重なっている部分がありました。
ウェルトの手入れをしていれば柔軟性を保てるのですが、もともと無理のかかる構造ではありますね。

洗ってリセットします
汚れが蓄積していそうですので、丸洗いをすることにしました。
その前に、たまった靴クリームやワックスをクリーナーで落としておきます。

ぬるま湯に浸けておくことで、汚れを溶かし出しつつ浮かせてから、サドルソープで洗います。

洗い上がったら、陰干しで「ざっくり」乾かします。

「じっとり」くらいの状態になったら、内部に新聞紙を突っ込んでさらに乾燥させます。このときに、型崩れの矯正もするようにしています。
この靴は中底の沈み込みが激しかったので、ウレタン製のギブス(笑)を掛けて乾かすことにより、平らな状態に戻す訳です。アッパーの形状も手で整えてありますので、丸洗い前に比べると本来の「シュッ」とした形になっています。

全体的にスッピンになり、リフレッシュできたと思います。この後は、久しぶりの「すくい縫い」なので楽しみです。
最後までご覧下さいまして、ありがとうございました。
次の機会に手順が分かるような写真を撮ろうと思います。分かってしまえば簡単でした。