本底が付いたボロボロのジョンロブ。ここからはエレガントな靴底を目指して作業を進めます。
ビッシリ並んだ化粧釘、なめらかなカラス仕上げ、目付けの効いたウェルト・・・どれも初めての仕様です。
「好きなだけ時間を掛けられる」という趣味の特権を活かして(笑)コツコツと仕上げていきたいと思います。
まずは革の積み上げから
ジョンロブのヒールは本革積み上げですので、そのまま再利用するつもりでした。
ブロックのまま古い接着剤を木ヤスリで削り落として、接着剤を塗り直し、貼り付け準備中です。

ところが、貼り付けてみたところ、ヒールの傾斜が合いません・・・
結局、3枚の積み上げから1枚を取り外し、少し厚い革に置き換えて傾斜を調整することにしました。

調整後の写真です。こうやった時に、かかとが「ガタガタ」しないように革を斜めに削ります。

ヒールの傾斜は別たちで削って調整しますので、その時にできた凸凹はガラスで削って滑らかにしました。

積み上げを釘で止めてから、トップリフトを貼り付けます。
写真のように、たくさんの釘を打つのは、次のような理由があると考えています。
- 交換パーツであるトップリフトと靴本体の境界となる
- 外周付近の革の密度を上げて、コバ面の型崩れを防ぐ

トップリフトを接着剤で貼り付けたら、ヒール全体の形状を削って整えます。
この靴はエレガントな雰囲気を出したいので、下側に向かってわずかにテーパー状を目指しました。「3次元的に面がなめらかにつながるように」「左右の靴が同じ形になるように」毎回うなりながら作業をしています。

積んだヒールは側面をひたすら磨くのです
ここからは「妥協しない心」が試される時間帯(笑)です。
磨きに入る前に、革を水で濡らしてハンマーでコツコツと叩き締めておきます。尖った(釘抜き)側で細かく叩いてから、平らな(釘打ち)側で凸凹をならします。

やすり4兄弟を順番に使って、少しずつ仕上げていきます。
それぞれの役割は前の記事でご紹介したイメージですが、それぞれの段階で面の表情が均一になるまで掛け切るのが、結局は早くきれいに仕上がるコツですね。
木ヤスリ ガラス #120紙やすり #240紙やすり
前半部のコバと同様に、最後に熱していないコテを軽く掛けておきました。

かかとを化粧釘で飾りました
次はヒールの底面です。
ダブテイル型のゴムが付いたトップリフトに、できるだけオリジナルに忠実なパターンで化粧釘を打ちました。

途中まで打ち込んだ化粧釘は、頭を切り落としてヤスリで整えます。断面が円形になって出代が1ミリを切ったら、革の面と「ツライチ」になるまでハンマーで打ち込んでしまいます。

さらに、紙やすりの#120→#240で平らにならすと、こんな感じに仕上がります。
やっと、ヒールができあがりました。

いよいよ各部の染色です
靴底は全面を黒く染める「カラス仕上げ」にします。
染料が入るように、本底のギン面は除去する必要があります。これまではガラスで削って済ませていましたが、最後の仕上がりを見ると、ガラスで削った跡が残ってしまうことがありました。
そこで今回は、ガラス→#120紙やすり→#240紙やすりの3兄弟で「なめらか仕上げ」を狙ってみました。

こんな感じ。

カラス仕上げですので、全体を真っ黒に塗ります。

黒く染めた靴底を、無色のソールステインで仕上げてみました。が、いつものようなツヤが出ません・・・順番を入れ替えると良かったのかも知れません。(でもインキを弾くかなぁ)

熱ゴテを掛けます
次に熱したコテでロウを浸透させ、保護・ツヤだしをします。
まずは、底面のエッジに細くコテを掛けます。いわゆる「額縁仕上げ」ですね。
本来はサイズの合った両爪のコバコテを使うことにより、エッジを補強するものだと考えられますが、そんなコテ持ってませんので。

コバのコテ作業を終えてから、目付けをしました。愛してやまないだし縫いのステッチを「プクプク」とさせる工程です。
自家製のコテを掛ける深さは目見当になりますので、マスキングテープを貼っておき、その切れ込み量を見ながら作業するという工夫をしてみました。

仕上がりは、こうなりました。
まだまだカイゼンが必要ですが、「出したい雰囲気は分からんでもない」という感じでしょうか。

最後に残ったロウを拭き取ると、ご褒美のツヤが現れます。
再利用した積み上げの層が目立つのは、革が劣化して(?)少しボソボソした感じになっているからですね。

かかとのギザギザ模様を付けて、靴底まわりの作業は終了です。

これで靴底まわりの作業は終了です
いろいろと手の込んだことに挑戦しましたので、すごく時間が掛かりました。
その甲斐あってか、いつもとは違うエレガントな色気が出せたような気がします。(真っ黒の靴底に「ごまかされている」だけかも知れませんが・・・)
この次には、ボロボロのアッパーが待っています。靴底に負けないような仕上がりを目指して、新しいことを試してみようと思います。
最後までご覧下さいまして、ありがとうございました。

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