作業は地味ですが、履き心地や安定感に直結する大事な工程です。苦しい前半の作業が終わると、後半はご褒美の(笑)削り・磨きが待っています。
作業の区切りがハッキリしているので、たくさん写真を撮ってしまいました。多少クドイかも知れませんが、少しずつ仕上がっていく過程をお楽しみ頂けたら嬉しいです。
革を積み上げてヒールを形成する作業
1枚目の積み上げで本底の丸みを調整します
本底の土踏まずやかかとは、平らではありません。貼り付けた1枚目の積み上げ革を削って、できるだけ平面に近づけます。


2枚目の積み上げは靴の傾斜にヒールの角度を合わせます
本底は前に向かって傾斜しています。2枚目では、この傾斜を調整します。
色々な方法があるようですが、私は積み上げ革を貼り付ける前に「削っては傾斜を確認」を繰り返して、かかとがベタっと接地するように調整します。


わずかにクサビ形になっています
トップリフトを貼る前にやるべきことがあります
トップリフトのみを交換することを考えて、積み上げ革までをスクリュー釘で本底に固定します。
この釘には固定する役割に加えて、積み上げ革の密度を上げる効果もあるため、このように沢山打ち込みます。

釘はトップリフトに当たらないように「追い込み」をしますが、ハンマーで手を叩いてしまいそうで、怖いです。ご参考までに、敬愛する「心の師匠」のお手本動画を貼っておきます。
最後はご褒美のトップリフトです
辛かった積み上げ工程も、ようやく終わりです(笑)トップリフトが付くと、一気に靴らしくなって、これまでの作業が報われるような達成感があります。
ここで私が注意しているのは、「左右を間違えない」ことと、がっちりとは釘止めしないので「ゴムのりでの接着前に熱活性させる」ことです。

ヒールの外周を整える作業
刃物で削って形状を決めます
1枚貼るたびに外周を切り回しますが、最終的に積み上がった状態で、左右のバランスや全体の雰囲気を見ながら少しずつ削って、納得のいく形状に仕上げます。

叩いて積み上げの革を引き締めます
トップリフトを貼る前に、釘をたくさん打ちましたが、さらに水を付けて叩くことで外側から革を締めます。
ハンマーの尖った方でしっかり叩いて、最後に平らな面(釘を打つ方)で叩いて凸凹をならしておきます。

ヒールの側面を磨いて仕上げます
木ヤスリでは、ハンマーで叩きまくって付いた凸凹が無くなるまで削ります。
「ガーっ」と一気に削ってしまいたいところですが、強い力で削るとそれだけ深い傷を付けることになり、この後の作業で直すのは難しいです。
私がコツだと思っているのは、できるだけ弱い力でヤスリを当てて、動かす回数で削っていくことです。
大きな凸凹が無くなって、深くない傷が全体に満遍なく付いているイメージです。

次は水で湿らせてから、小さく割ったガラス板で、木ヤスリの傷が消えるまで削ります。
これも、力を入れずに滑らせるように削ります。切れが落ちたらすぐに、新しいガラスに交換することが大事です。

次は、♯120の紙やすりです。写真では分かりにくいですが、ガラスで付いた細かい線や角が見えなくなるまで、じっくり掛けます。
全体が均一な表情になったら、軽く湿らせながら削り粉を落として、もう一度♯120をざっと掛けます。

私は、♯240の紙やすりで終わります。♯120と同様の作業です。

アゴを仕上げて一段落
私はここまで来てからヒールの一番前(アゴ)の角度や形を決めます。
左右を揃えて目印の線を引き、内側とのつながりに注意しながら、全体の形を刃物で削り出します。
その後は、ガラス→♯120→♯240の順に磨いて終わりです。


まとめ
私にとって積み上げは、根気勝負の作業です。特に、かかとの丸みや傾斜の調整で積み上げ革を削る時は、肩から指先までがクタクタになります。
ですが、それぞれの工程での粘り強く丁寧な作業を(まさに)積み上げると、その成果は最終的な仕上がりに必ず現れます。こまめに休憩を入れながら、根気を切らさないようにするのがポイントだと思います。
最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。
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