いつもは楽しみにしている「だし縫い」ですが、今回に限っては少し不安を抱えた状態でした。それと言うのも、この前に修理した靴のだし縫いが散々だったためです。
ただ、失敗するたびに新たに試したいことがムクムクと頭をもたげてくるのが趣味の靴修理の魔力なのです・・・では、行ってみましょう!
リベンジだし縫い スタートです
最初に開けた縫い穴に糸を通して、左右の長さを揃えた状態です。「よ~し、やるぞぉ」と深呼吸しています。

縫い始めてみると、事前の不安は何だったのか?というくらいフツーに作業が進みます。早くもスランプ脱出宣言です!!

そのまま気持ち良くなって(笑)手を動かしているうちに、片足を縫い終えていました。毛針(テグス)に巻き付けた糸はチャンと一体化していて、外れる気配はありません。

ちなみにつま先のステッチは、こんな感じです。仕込み通り、トゥスティールのビスを避けることができました。

とか言っている間に、残った方の片足も縫い上げていました。だし縫いの糸には両端に毛針を付けますので、両足で4本の毛針を使います。今回は全て外れることなく完走しましたので、4勝0敗ということになります。

うまく行った理由を検証してみました
勿体をつけましたが、やったことは「暖房(ちなみに23℃設定)」です。
冒頭にご紹介した記事にもチラッと書いてありますが、「チャンが硬いような気がする」という感覚が引っ掛かっていたのです。
このチャンの硬さを確かめるべく、端を細く処理しただし縫い糸にチャンを擦り込んだものを用意してみました。

23℃設定の暖房を入れた状態で、糸先を丸めてみました。所々で折れ曲がりますが、柔軟に丸めることができます。

暖房を切って十分に時間が経った「寒っ!」という状態で同じことをしてみました。
変わりませんね。見た目は・・・
微妙な違いなのですが、丸める時に「パキパキ」と割れる音がしました。温度にすれば10℃くらいの違いですが、チャンにとっては柔軟性を保てるかどうかのボーダーラインにあったようです。

達成感とともにドブ伏せです
スッキリしたところで(私だけ?)修理に戻ります。ドブ起こしでめくったピラピラを元通りに貼り戻す「ドブ伏せ」と呼ばれる作業です。
ピラピラはゴムのりで保持しますので、十分な接着力を得るために接着面を紙やすりで荒らします。薄っぺらいので少し怖いですが、表面が毛羽立つまでガシガシとやります。

紙やすりで出た削りカスを掃除してから、ゴムのりを塗り付けます。「薄くムラなく塗る」ためには、なるべくフレッシュな(サラサラの)ゴムのりを使うことが大事だと思います。

ゴムのりがベタベタしなくなるまで乾燥させたら、ピラピラのギン面側を水で濡らして柔らかくしてから貼り付けていきます。
私は「師匠」の教えに従って、ハンマーでギューっと押さえ付ける方法で作業します。ホームセンターで打っている安物の日曜大工用ですが、押さえ付けている面(釘を打つところ)は革を傷付けないようピカピカに磨いてあります。

ハンマーで押さえ付けつつ、時々コンコンと叩くことで、確実に接着させながら底面全体の形状を整えます。
ハンマーの跡を消しつつ、全体を滑らかにするために、「こくり棒」で擦って仕上げます。
始める前は不安がありましたが、終わってみれば「いつもの楽しいだし縫い」でした。
それはともかく、チャンの奥深さ=先人の知恵に改めて感心させられる経験になりました。

最後までご覧下さいまして、ありがとうございました。次回は、積み上げかな・・・
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