宮城興業 MD-02 自分でオールソール靴修理5 一気に仕上げ編

完成
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これまで靴の構造を組み立ててきました。ここからは「見栄え」を上げることが主な目的の作業に入ります。いつもの楽しいヤツです。

私なりに段取りを考えながら作業した順序をそのまま記事にしていますので、少し行ったり来たりした感じになりますが、流れを楽しんで頂けますと嬉しいです。

トゥスチールの取り付け

今回は、コバを仕上げる前にトゥスチールを取り付けてみました。はみ出した部分を一緒に削る作戦です。

トゥスチールは本底にゴムのりとビスで固定します。ビスの緩み防止のために、ゼリー状瞬間接着剤を付けておきました。

ゼリー状瞬間接着剤
ダイソーの「使い切り」タイプです(ちなみに4個入)
瞬間接着剤は、こちらの動画を参考にしました

コバの加工精度が甘くてトゥスチールと隙間ができたので、コバを水で濡らして「こくり棒」で押し込んでおきました。

コバを押し込む
ごまかしですね・・・

コバからはみ出したトゥスチールを根気よく削り落とせば、この工程は終了です。

ひたすら削る
グラインダーが欲しくなります

コバのやすり作業

別たちで形を決めたコバを、滑らかになるように仕上げていきます。

初めに、ヒールの積み上げ革を水で濡らしてからハンマーで叩き締めます。

釘抜き用の尖った方で細かく、ムラなく凹ましておいて、仕上げに釘を打つ側でならすようにしています。

積み上げを締める
力加減が難しいです

ハンマーで叩いた跡が凸凹していますので、木ヤスリで平らに削ります。深い傷が付かないように、なるべく弱い力で回数で削っていくイメージです。

この工程でヒールの形状がほぼ決まりますので、滑らかな曲面にするために大きなストロークで木ヤスリを動かすのもポイントだと思います。

木ヤスリ
音楽を聴きながら、のんびり作業します

ハチマキ(ウェルトの代わりについている部材)に傷を付けると取り切るのに苦労しますので、マスキングテープを貼っています

木ヤスリの細かい傷は小さく割ったガラス板で削って消していきます。こちらも力を入れずにガラスの切れで作業するイメージです。

ガラス
切れないガラスはさっさと交換します

#120の紙やすりです。乾いた状態で全体が均一な表情になるまで掛けてから、コバを軽く水で湿らせてもう一度掛け直します。

このように掛け直すと、#120よりも少し細かい目で仕上げた感じになるように思います。

120番
紙やすりを自作のゴムブロックに巻き付けています

#240でも同じ作業をします。ここまで来ると、水で湿らせたときにツヤが出始めます。

240番
この番手はサッと掛けるイメージです
「これくらいの質感もいいなぁ」と思ってたら、売っていました(笑)

コバにやすりを掛けるとバリが出ますので、最後に面取りをしておきます。

面取りは靴底側のみです

一連の作業では、できるだけウェルトを削らないように注意します。ウェルトがダメになると「靴底だけ取り換える」というグッドイヤーウェルト製法のメリットを活かせなくなるからです。

面取り
バリを落とすと靴っぽさ(?)が増しますね

ここでからゴテを掛けました。水で濡らしたコバにコテを押し付けて擦ることで、コバのエッジを出しながら革を押し固めます。

爪先にマスキングテープを貼っているのは、トゥスチールに当たってコテに傷が付くのを防止するためです。早くもこの時点で今回の作戦が失敗だったことに気付きました(汗)

空ゴテ
力の入れ加減が難しいです・・・

トップリフトの化粧釘

釘を打つ前の作業がしやすい間にトップリフトのギン面を落としておきます。

ギン面を落とす
ゴムの部分のマスキングテープ、意味ないかも

化粧釘のパターンを決めたら、下穴を開けます。ダイソーの千枚通しが「ポキッ」と行かないかヒヤヒヤしながらの作業です。

マスキングテープが巻いてあるのは下穴の深さの目安です

下穴を開ける
結構な力が必要で、右手が痛くなります

途中まで打ち込んだ真鍮釘をニッパーでプチプチと切り落とします。1本だけ長い釘があるのは、積み上げを止めた釘と当たって深く打ち込めなかったものです。コバからの距離をずらしたつもりだったのですが・・・

化粧釘を切り落とす
最後まで打ち込んでしまう方法もあるようです

切り落とした真鍮釘を磨けば完了です。

金やすり
まずは金ヤスリ
やすり掛け完了
紙やすりで仕上げます

コバの染色

今回も大好きな「半カラス」仕上げです。魚拓を利用して型紙を作り、マスキングテープを切り出しました。

トーマスヒールのアゴ形状とJRのロゴとのバランスが悩ましいところです。

半カラスの型紙
遠近法になっています。写真がまずいですね

染めますので本底のギンは落とします。ロゴを削らないように注意しながら周りをコチョコチョとやりました。

本底のギン面を落とす
ガラスでも革が硬いのが分かります
ロゴ周り
コチョコチョ

特に理由はありませんが、私はだし縫いの糸から染めます。使っているのは「早染めインキ」です。

だし縫い糸の染色

先ほどご紹介した動画を参考に、インキを塗って乾かしたら#240の紙やすりで面を整えて、もう一度インキを塗り重ねてみました。

インク後の紙やすり
表面をなでる感じです
肌理を整える
インキのテカテカ感が抑えられました

熱ゴテ仕上げ

大好きな工程「熱ゴテ」です。コバに塗り付けたロウをコテで溶かしながら浸透させていきます。

無色のロウ
無色のロウを使いました

これまた熱した布で表面に残ったロウを拭き取ると、しっとりとした艶のコバが現れます。

さらに、早染めインキを2度塗りしたことで

  • 色ムラなく、深い黒色に仕上がる
  • 全体の表情にもムラが出にくくなる

という効果が出ているように感じました。

黒光り
好みの質感になりました

最終仕上げ

靴底をステインで染めます。塗ってから「乾き切る前に」布で磨くとピカピカに仕上がるのですが、この「乾き切る前に」が曲者なのです。

早すぎると光り出すまでに磨く時間が増えますので、いつもより乾かし気味で磨き始めたのですが、どれだけ磨いてもツヤが出ることはありませんでした・・・横着してはいけないということですね。

本底の染め
磨いても光らないのは悲しいです

最後は靴底の外周を「額縁仕上げ」にします。時間を掛けてロウを十分に浸透させることを心掛けています。

額縁仕上げ中
アゴのラインが難しいです

ここで、つま先のコバがうまく仕上がっていないことが気になり、ガラス掛けからやり直しました。トゥスチールが邪魔で磨きにくいのが原因です。作業順序の見直しが必要ですね。

こういう時に、妥協せず、できるだけの手直しをするのが大事だと考えています

つま先のやり直し
コバの形とウェルトとの段差が気に入りませんでした

ヒールの上端にギザギザ模様を付けました。100円ライターを改造した踵車は、アルミ板を加工したガイドを取り付けてみました。

かかとのギザギザ
右が作業後です

剥がしておいた中敷きを両面テープとゴムのりで貼り直せば、できあがり。ホッとするような名残惜しいような気持ちになります。

中敷きのロゴはパターンオーダーメイドをお願いしたショップのオリジナルになっています。Bという初めてのウィズを提案して頂きました。

中敷き
「終わったー」と感じる瞬間

仕上げの靴磨きはお手入れも兼ねて楽しみます。手垢などの汚れを落としたら、デリケートクリームならぬダイソーのベビーローションで栄養補給します。

ぬりぬり
伸びがよく、べた付きません
本家?はコレ

靴底にも薄くワックスを掛けました。履き下ろせば取れてしまいますが、それでも仕上がり時点ではツヤツヤにしておきたいものです。

毎回ほぼ同様の作業ですが、そのたびに新しい気付きがあり、今回も楽しく進めることができました。次の教材では、この気付きを確実に活かすことをテーマにしようと思っています。

最後までお付き合い下さいまして、ありがとうございました。

コテコテの靴底
なかなか個性的?

(付録)作業の反省まとめ

今回の修理でも色々な気付きがありました。次回の作業へ反映できるようにまとめておきます。

完成を後ろから
インサイドストレートな木型です
  • つま先とかかとの中心に印を打って魚拓にも描き写すと、本底の貼り付け精度が上がる
  • コバの染色は、インキ→紙やすり→インキの2度塗りが綺麗に仕上がる
  • トゥスチールと本底に段差が残った→スチールがハマる位置を少し深めに削ってみる
  • トゥスチールが邪魔でコバの仕上げが雑になった→手順を逆にする
  • 化粧釘が積み上げの釘とぶつかった→積み上げの釘の位置をヒールゲージに描き写しておく
  • ソールステインの艶出しに失敗した→乾き切る前に磨き始める

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